「トイレ行ってくるから、ここでちょっと待ってて」
「家の前のコンビニだから、赤ちゃんは家で寝かせたままでいいか」
「車の中で動画見てるし、2〜3分なら置いていっても大丈夫だろう」
パパ目線で見ると「よくある」「みんなやってそう」な行動かもしれません。
でも実際には、こうした「ちょっとだけ」「数分だけ」の隙に、
子どもが事件や事故に巻き込まれているケースが、ニュースで何度も報じられています。
このページでは、
・パパがやりがちな「ちょっとだけ」の具体的な場面
・実際に起きたニュースと、そこから分かるリスク
・男の子も女の子も被害に遭うという現実
・ベランダやベッドからの転落事故のこわさ
・法的な責任や、虐待とみなされかねないケース
・年齢別「どこまで目を離さないほうがいいか」の目安
・どうしてもトイレや買い物に行きたいときの現実的な代替案
・家庭で共有したい「子どもを一人にしないルール」チェックリスト
を、パパ目線で整理していきます。
パパがやりがちな「ちょっとだけ」シーン
まずは、日常でやりがちな場面をイメージしてみます。
・ショッピングモールのトイレ
個室に入るとき、子どもを通路に立たせたまま
「ここで待っててね」とだけ言ってドアを閉める
・家の中
赤ちゃんがベビーベッドで寝ているのを見て
鍵だけかけて、家のすぐ前のコンビニや自販機まで出る
・車の中
チャイルドシートに座らせたまま動画を流しておき
「少しの間だから」と、パパだけ降りて買い物やATMへ
頭の中の言い訳は、だいたい似ています。
・数分で戻るから大丈夫
・見える範囲だし、危ない人なんて滅多にいない
・自分も子どもの頃は似たようなことがあった
・今まで事故も起きていないから平気だろう
こうした感覚のまま「何も起きない日」が積み重なると、
「やっても大丈夫なこと」として習慣化されてしまいます。
でも、ニュースで報じられている事件を見ていくと、
「たまたま今まで何も起きていなかっただけ」と考えたほうが自然です。
実際のニュースで起きたこと
ここからは、実際に報道された事件をいくつか紹介します。
詳細は、それぞれのリンクから確認できます。
スーパーのトイレで起きた3歳女児殺害事件(熊本)
2011年、熊本市内のスーパーで、当時3歳の女の子が行方不明になり、翌日遺体で見つかった事件があります。犯人の男は、店内のトイレで女の子の首を絞め、リュックサックに入れて店外へ運び出し、遺棄したとされています(熊本3歳女児殺害事件)。
事件の経緯はテレビ番組や講演で繰り返し伝えられており、
「スーパーのトイレ付近で、一人になった数分の間」に命が奪われたことがわかります。
参考:
熊本3歳女児殺害事件(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/熊本3歳女児殺害事件犯人からの手紙 ~女児殺人事件 遺族の13年~(RKB毎日放送)
https://rkb.jp/contents/202402/186274/
両親と一緒にいたのに…商業施設内の多目的トイレでの性犯罪(埼玉・八潮市)
2024年、埼玉県八潮市の商業施設で、小学校低学年の女の子が中学生の少年に声をかけられ、多目的トイレに連れ込まれ性被害を受けた事件が報じられました。女の子は両親と一緒に来店していましたが、声をかけられた時には離れた場所で一人になっていたとされています。
「親と同じ建物の中にいた」「ほんの短い時間だけ一人になっていた」
そのタイミングを狙われた事件です。
参考:
埼玉新聞「性的暴行…小学生の女児、商業施設で襲われる 両親と来店した昼過ぎに悲劇」
https://www.saitama-np.co.jp/index.php/articles/85288
母親が少し外出している間のベランダ転落事故
マンションやタワーマンションのベランダからの幼児転落事故も、たびたびニュースになります。
例えば、消費者庁のデータや新聞報道では、
・9階の自宅ベランダから3歳男児が転落し死亡した事故(母親が約20分外出中、男児は留守番中)
・8階のベランダから3歳男児が転落し死亡した事故(祖父と留守番中、祖父が外出している間に発生)
などが紹介されています。どちらも「家の中で留守番している間」「大人が少し外に出ている間」に起きた事故です。
参考:
セコム「幼児のマンション転落事故に学ぶ安全対策」
https://www.secom.co.jp/kodomo/p/20170601.html
また、2022年には千葉市のタワーマンション25階のベランダから2歳男児が転落死した事故も報じられています。タワマンの高層階でも、「ちょっとした隙」に子どもがベランダに出てしまい、転落につながるケースがあることが指摘されています。
参考:
週刊女性PRIME「『もしもタワマンから落ちたら……』頻発する子どもの転落事故」
https://www.jprime.jp/articles/-/36080
ベッドやベビーベッドからの転落・窒息事故
「家の中」「ベッドの上」も、安全とは限りません。
消費者庁が医療機関の報告をまとめた資料によると、
大人用ベッドやベビーベッドからの転落・窒息事故が、平成27年1月から令和2年9月末までに912件報告されています。
特に0歳児が534件、1歳児が160件と、0〜1歳に集中していました。
・数十センチの高さでも、頭から落ちれば頭蓋骨骨折や頭蓋内損傷のおそれがある
・ベッドと壁の隙間、ベッドガードやベビーベッド収納扉との隙間に挟まれて窒息するケースもある
といった事例が挙げられています。
参考:
消費者庁「0~1歳児のベッドからの転落事故に御注意ください」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_041/
車内放置で幼いきょうだいが死亡した事件(神奈川)
神奈川県内では、幼いきょうだいが車内に放置され、熱中症で死亡する事件が発生しました。この事件を受けて、神奈川県や市町村は「子どもの車内放置は児童虐待(ネグレクト)であり、たとえ短時間でも絶対にしてはいけない」と強い注意喚起を行っています。
リーフレットでは、エンジンを止めてから5分で車内温度は約5度上昇し、
15分後には熱中症指数が危険レベルに達し、車内温度が50度を超えることもあると説明されています。
参考:
神奈川県「子どもの車内放置は児童虐待です」
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/he8/2022shanaihouti.html神奈川県児童相談所リーフレット(PDF)
https://www.city.hadano.kanagawa.jp/www/contents/1562895650561/simple/syanaihouchi.pdf
4歳男児が犠牲になった誘拐殺人事件(長崎)
長崎市では、4歳の男の子が誘拐・殺害される事件が起きており、
「長崎幼児誘拐殺人事件」として大きく報じられました。
事件をきっかけに、地域ぐるみで子どもの見守りパトロールが行われるようになったことからも、「一瞬目を離した隙」に命が奪われてしまう現実の重さがわかります。
参考:
東京弁護士会「長崎幼児誘拐殺人事件に関する会長声明」
https://www.toben.or.jp/message/seimei/post-58.html
男の子も女の子も被害に遭っている
「うちは男の子だし、そこまで心配しなくてもいいのでは」と思うパパもいるかもしれませんが、実際には男児が被害に遭っている事件も多数あります。
4歳男児が誘拐・殺害された長崎の事件や、過去の吉展ちゃん誘拐殺人事件(東京)など、重大事件の被害児童が男の子だったケースは決して少なくありません。
「女の子だから危ない」「男の子だから大丈夫」という区別は通用しない、
という前提をパパとして持っておいたほうが安全です。
参考:
吉展ちゃん誘拐殺人事件(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/吉展ちゃん誘拐殺人事件
なぜ「数分でも危ない」のか
ニュースを見ると分かる通り、「危険な状況」は次のようなパターンで起きています。
・トイレや店内で、子どもが一人で立っている時間がある
・車内に残したまま、親が車から離れている
・家の中に一人で残された状態で、親が外出している
・ベランダや窓、ベッドの近くに、子どもだけになってしまう時間がある
そこに潜むリスクは、とても大きいです。
・連れ去り、性被害
・転落や交通事故、迷子
・火事、感電、ガス事故
・窒息や誤飲、急な体調変化
・車内の高温や熱中症
・ベランダや窓からの転落
・ベッドやベビーベッドからの転落・窒息
どれも、「その場に大人がいれば防げたかもしれない」ものばかりです。
法的な責任と「虐待」とみなされる可能性
親としてのつもりはどうであれ、
子どもを危険な状況に放置し、事故や事件が起きた場合には、法的な責任を問われる可能性があります。
・保護者には、子どもを安全に監護する義務がある
・危険な状態に子どもを放置し、死亡・重傷などの結果が出た場合、「保護責任者遺棄致死傷」などに問われることがある
・車内放置などは、児童虐待(ネグレクト)として児童相談所や警察が介入するケースもある
「虐待しているつもりなんて全くなかった」としても、
法律上は「安全を守る義務を果たしていなかった」と見なされれば、家庭への指導・介入・処罰の対象になり得ます。
ニュースで「親は『数分のつもりだった』と話している」という報道を見るたびに、
「自分も同じことをしていないか」を振り返る必要があります。
年齢別「どこまで目を離さないほうがいいか」の目安
子どもの成長スピードや性格には個人差がありますが、
一般的な目安として、次のように考えておくと安心です。
0〜2歳ごろ
・基本的に「一人にしない」が大前提
・家の中でも、危険なものが手の届く範囲にある部屋での放置はNG
・数分の外出でも、家に置いたままにしない
・車内に一人で残すのは論外(時間や季節を問わず避ける)
・ベッドやソファの上で寝かせたまま、別室で長時間作業しない
この時期は、自分で危険を避けることができません。
3〜6歳ごろ(未就学児)
・「言えば分かる」としても、好奇心が強く、衝動的に動きやすい
・外出先や人の多い場所で、一人にするのは基本的にNG
・自宅内でも、火気・水回り・高いところ・道路に面した出入口など、危険を伴う場所では目を離さない
・ベランダや窓際では、絶対に一人にしない(踏み台になる物を置かない)
見た目はしっかりしてきますが、
「やってみたい」が勝ってしまう年齢でもあります。
小学校低学年(7〜9歳ごろ)
・環境や地域によって、「一人でできること」の範囲が変わる
・近所の公園や習い事など、一人行動が増え始める時期
・人の多い施設や知らない場所で「ここで待ってて」はまだリスクが高い
判断基準としては、
・その場がどれくらい危険か
・子どもの性格(パニックになりやすいか、落ち着いて行動できるか)
・何かあったとき、自分で助けを求められるか
といった要素を組み合わせて考えます。
迷ったら、「今回は一緒に連れて行く」を基本にしておいたほうが安心です。
どうしてもトイレや買い物に行きたいときの代替案
現実問題として、トイレにも行きたいし、買い物が必要なこともあります。
そのときに「子どもを一人にしない」ための工夫を考えてみます。
外出先のトイレ
・ベビーカーごと入れる多目的トイレを探す
・一緒に入れる広い個室トイレを優先的に使う
・家族や一緒にいる大人がいる場合は、その人に子どもを見てもらう
どうしても一人で子どもを連れているときは、
「ここで待ってて」ではなく「一緒に来て」を基本に考えます。
状況によっては、店員さんに
「数分だけトイレに行きたいので、ここで待っている子を見ていてもらえませんか」
と相談できる場面もあります(もちろん、誰にでも頼めるわけではないので判断は必要です)。
自宅から近所のコンビニ・買い物
・子どもが寝ている間に外出しない
・どうしても買い物に行きたい場合は、ママがいる時間帯や家族がいるタイミングにする
・ネットスーパーや宅配サービスを活用して、外出の頻度を減らす
「すぐそこだから」「今までも大丈夫だったから」と言い訳しやすい場面ですが、
発想を「一緒に連れて行くか」「行く回数を減らすか」に切り替えていきます。
車でのちょっと寄り道
・コンビニやATMであっても、子どもを車に残さない
・手間でも、子どもをチャイルドシートから降ろして一緒に連れて行く
暑い時期でなくても、車内放置には
・熱中症
・誤って外に出て事故に遭う
・連れ去り
などのリスクがあります。
神奈川県などが「子どもの車内放置は児童虐待」と明言しているのは、その危険性が極めて高いからです。
防犯グッズは「あくまで補助」
・子ども用の防犯ブザー
・GPSタグ
・迷子防止リストバンド
こうしたグッズは、「いざというときの補助」にはなりますが、
・持たせているから一人にしても安心
・GPSがあるから放っておいても大丈夫
という使い方は危険です。
ベビーカーや抱っこ紐・おんぶ紐は、「子どもを一緒に連れて行くための道具」として非常に有効です。
防犯ブザーやGPSタグなどは、「一人にしてもいい免罪符」ではなく、「万が一の備え」としてセットで考えるのがポイントです。
家庭内で共有したい「子どもを一人にしないルール」チェックリスト
最後に、夫婦や家族で話し合うときに使えるチェックリストを用意しました。
気になるところに印をつけながら、家庭のルールづくりに使ってみてください。
- 赤ちゃん(0〜2歳)を家に一人で残して外出しない
- コンビニや自販機が近くても、「寝ているから」と置いていかない
- 子どもだけを車内に残さない(時間・季節を問わず)ショッピングモールやトイレ前で、子どもを一人で待たせない
- 外出先のトイレは、できるだけ子どもと一緒に入れる場所を選ぶ
- 買い物は、できるだけ子どもと一緒に行くか、宅配やネットスーパーを併用する
- ベランダや窓際で子どもを一人にしない(踏み台になる物を置かない)
- ベッドやソファの上に寝かせたまま、長時間別室にいない
- 「このくらいなら大丈夫だろう」と思ったときほど、一度立ち止まって考える
- 防犯ブザーやGPSタグは、「一人にしても平気」の理由にはしない
- 迷ったときは、「もし今何か起きたら、自分は後悔しないか」を基準に判断する
子どもを一人にしないことは、
「親が神経質になるため」のルールではなく、
「あとから取り返しのつかない後悔をしないため」のルールです。
パパとしても、「そこまで大げさに考えなくても」と思いたくなる場面はあります。
それでも、実際に起きたニュースや事件を知っておくと、
「ちょっとくらい大丈夫だろう」
と軽く考える気持ちは、少しずつ変わっていきます。
今日からできるのは、たった一つ。
「この子を一人にしないには、どう動けばいいか」を一度だけ立ち止まって考えてみることです。
その小さな判断の積み重ねが、
子どもの命と、パパ自身の「後悔しない未来」を守ってくれます。
