「抱っこばっかりしてると抱き癖がつくよ」
「はちみつは健康にいいから食べさせなさい」
「うつ伏せで寝かせたほうが頭がきれいに丸くなるのよ」
悪気なく言っているのは分かる。
でも、その一言でママの心がずしんと重くなることがあります。
ママは今の育児情報を必死に調べている。
一方で、祖父母世代は「自分たちの経験」がベース。
このギャップの板挟みになるのがパパです。
この記事では、
・祖父母世代と今の育児で何が違うのか
・よくある「昔の育児フレーズ」と、今の考え方
・ママがしんどくなるポイント
・パパが間に入るときの考え方
(危険だから止めるラインと、考え方の違いとして受け止めるライン)
・やんわり断るセリフ例と、「うちの育児ルール」を共有するコツ
をまとめていきます。
ママがパパに「これ読んで」と送りやすく、
パパはパパで「なるほど、こう動けばいいのか」と思える内容を目指しています。
祖父母世代と今の育児、何が違う?
まず、祖父母が「間違っている」という話ではありません。
前提として、こんな違いがあります。
・医学的な知識やエビデンスがアップデートされてきた
・母子手帳の内容や、病院の指導も変わってきた
・昔よりも少子化が進み、一人の子にかける目や手が増えた
・共働き家庭が増え、ママも仕事との両立を背負っている
・ベビーカー、チャイルドシート、ベビーグッズの安全基準が変わった
昔は
「みんなそうしてきたから大丈夫」
「なんとなく元気に育ったから平気」
が通用していた部分もあります。
今のママは、
・ネットや本でリスクも含めて大量の情報が入ってくる
・医師や助産師からの説明も「なるべく安全側」に寄っている
・何かあったとき、親として責められるのは自分たち
というプレッシャーを抱えています。
だからこそ、
「昔はこうだった」
「そんなに気にしなくていい」
だけで片付けられると、
ママの心はかなり苦しくなります。
よくある「昔の育児フレーズ」と今の考え方
代表的なものを、パパ目線で整理しておきます。
抱き癖がつくから、抱っこしすぎないほうがいい

祖父母の感覚
「泣くたびに抱っこしてたらキリがない」
「放っておけばそのうち泣き止む」
今の考え方
・赤ちゃんは泣くことでしか不快を伝えられない
・泣いたら抱っこしてもらえる経験は「安心感」や「信頼感」につながる
・抱かれて安心した赤ちゃんは、逆に落ち着いていきやすい
ママの本音
「抱き癖と言われるたびに、そんなものはないし“甘やかしてる”って責められている気がする」
パパとしては、
「今は、泣いたら抱っこして安心させるほうがいいって言われることが多いみたいだよ」
と、さりげなく今の考え方を添えてあげられると、ママの味方になります。
靴下履かせないと可哀想
祖父母の感覚
「足が冷えたら風邪をひく」
「小さい子は身体を冷やさないほうがいい」
今の考え方
・室内で暖房が効いているなら、むしろ暑くなりすぎることもある
・汗をかいて冷えるほうが風邪につながりやすい
・はいはいやつかまり立ちの時期は、素足のほうが滑りにくく安全な場合もある
ママの本音
「その都度温度や様子を見て調整しているのに、何も見ずに“可哀想”と言われるのがしんどい」
ここは「絶対にダメ」という話ではないので、あとで出てくる
「考え方の違いとして受け止めるライン」に入ります。
白湯や果汁をあげる
祖父母の感覚
「お風呂上がりには白湯」
「ジュースの前に、薄めた果汁で練習」
今の考え方
・母乳やミルクだけで足りる時期は、基本的にそれだけでOKとされることが多い
・果汁は糖分が多く、虫歯や味覚の偏りにつながる可能性も指摘されている
・与えるとしても、開始時期や量は慎重に
ここも、
「今は“白湯や果汁は必須ではない”と言われることが多い」
「必要になりそうなら、小児科や助産師さんと相談しながら決めたい」
というスタンスで、パパから伝えられるとママが言いやすくなります。
うつ伏せで寝かせたほうがいい
祖父母の感覚
「うつ伏せのほうが頭の形がきれいになる」
「よく眠るから楽」
今の考え方
・乳幼児突然死症候群(SIDS)との関連から、
普段のねんねは「仰向け」が推奨されている
・うつ伏せは、親がしっかり見守れる日中のあそび(首すわりの練習など)で行うことが多い
ここも「危険なことは止めるライン」です。
パパのひと言
「寝るときのうつ伏せは、突然死の危険性が高まるから今は推奨されていないんだよ。
その代わり、起きてるときの“うつ伏せ(タミータイム)”は一緒に見守ってくれたら嬉しいかな。」
と、「やめてほしいこと」と「お願いしたいこと」のセットで伝えられると穏やかです。
チャイルドシートは短距離でも必須
祖父母の感覚
・「昔は膝に乗せて普通に乗ってた」
・「近所のスーパーくらいなら抱っこで大丈夫」
今の考え方
・車移動では、チャイルドシートは法律上も原則義務
・時速40kmでも急ブレーキや事故が起きると、大人の腕では支えきれない
・短距離でも、事故のリスクがゼロになるわけではない
これは完全に「絶対に守るべき安全ライン」です。
パパのひと言
「今は、車に乗るときはどんなに近くてもチャイルドシートが基本なんだ。昔は大丈夫だったかもしれないけど、今は法律でも決まっているから、ここだけは徹底させてね。」
と、感情論ではなく「今のルール」として伝えるのがポイントです。
口移しで食べさせる・同じスプーンであげる
祖父母の感覚
・自分が噛み砕いたものをあげるのは「愛情表現」
・味見したスプーンでそのままあげるのは普通のこと
今の考え方
・大人の口の中の虫歯菌が、赤ちゃんの口にうつるリスクがある
・虫歯菌との出会いが早いほど、虫歯になりやすくなると言われている
・口移しや、同じスプーン・箸の共有はできるだけ避けたい
ママの本音
「せっかく歯みがきや食べ方に気をつけているのに、口移しをされると全部台無しにされた気持ちになる」
ここも「止めたいライン」に近いものです。
パパのひと言
「かわいがってくれて本当にありがたいんだけど、
虫歯のことを考えると、口移しや同じスプーンだけはやめておきたいんだ。
その分、抱っこや遊びはたくさんお願いしたい。」
と、こちらも同様に「やめてほしいこと」と「代わりにお願いしたいこと」をセットで伝えると、祖父母側も「拒否された」感が少なくなります。

ママが一人で抱え込みやすいしんどさ
ママは祖父母から言われるたびに、
頭の中で今の育児情報とのギャップを計算し
「どう説明したら角が立たないか」を悩み
でも、その場ではうまく言い返せずにモヤモヤを溜めがちです。
よくある本音
「私が神経質なのかな…」
「お義母さんを嫌いになりたくないのに、イライラしてしまう」
「パパの前で愚痴ると“そんなに言わなくても”って言われそうで怖い」
この状態が続くと、
・義両親との距離を取りたくなる
・パパとも本音を話しづらくなる
・育児そのものが孤独に感じられてくる
という悪循環に入ってしまいます。
ここをほぐせるのは、パパだけです。
パパが担うべき「間に入る」役割
パパの役割は、ざっくり言うと二つです。
- 危険なことを止める「ストッパー」になる
- 考え方の違いを、翻訳してなだめる「クッション」になる
それぞれのラインを整理しておきます。
① 危険なことはきっぱり止めるライン
ここは「遠慮よりも安全優先」でいいところです。例としては、
・はちみつ(1歳未満はNG)
・寝かせるときのうつ伏せ強要
・チャイルドシートに乗せずに車に乗せようとする
・ミルクの濃さを勝手に変える
・勝手に離乳食を味見させる(塩分・アレルギーのリスク)
こういったことに対しては、パパが前に出て
「ここだけは、今はこういうルールだから守ってほしい」
と、しっかり伝える必要があります。
ポイントは
・ママが悪者にならないようにする
・情報源を一緒に見せる(母子手帳、自治体のパンフレットなど)
・責める口調ではなく「お願い」として伝える
ことです。
② 考え方の違いとして受け止めるライン
一方で、「どちらでも命に関わるほどではないもの」は
受け止め方を工夫したいラインです。
例
・室内での靴下の有無
・抱っこの頻度の感じ方
・服装の好み(少し厚着 or 少し薄着)
・ベビーカーより抱っこのほうがいい、などの価値観
ここは、「絶対に今のやり方じゃないとダメ」とまでは言い切れません。
パパとしては、
「おばあちゃんの時代はそうだったんだね。
今はこういう考えが主流みたいだから、うちではこっちをベースにしてみるよ。」
と、「否定」ではなく「違いの紹介」に変えていくイメージです。
理由もセットで伝えるとよりよいでしょう。
感謝を伝えつつ、やんわり断るセリフ集(パパが使える例)
ママが言いにくいことほど、パパの一言が効きます。
こんなフレーズを、状況に合わせて使ってみてください。
「今はこう言われているみたいで…」型
「教えてくれてありがとう。
最近の育児の本とかでも、ミルクは表示どおりの濃さでって書いてあってさ。
うちもそれに合わせてやってみようと思ってるんだ。」
「助かります」+「ここだけお願いします」型
「色々手伝ってくれて本当に助かってる。
ただ、寝るときのうつ伏せだけは、今はやめておこうって産院でも言われてて。
そこだけ一緒に気をつけてもらえると嬉しい。」
「ママを守る」ことを前面に出す型
「今、妻がすごく頑張って色々調べてて。
“このやり方でいこう”って決めてるみたいだから、
しばらくはそのやり方を一緒に応援してもらえたらうれしいです。」
「情報のせい」にする型
「最近は、育児の情報が多くて、
ちょっとでもリスクがあることは全部“やめたほうがいい”って言われちゃうんですよね。
だから、うちもそれに合わせて慎重めにやってます。」
パパがこういう言い方をしてくれるだけで、
ママは「自分だけが戦っている感じ」から解放されます。
一度「うちの育児ルール」を共有しておくメリット
場当たり的にその場その場で対応するより、
一度だけでも時間をとって「家族会議」をしておくと、あとがラクです。
内容としては、例えばこんなことを共有します。
進め方のコツ
・いきなり「ルールです」と押しつけず、「お願いごとの共有」として話す
・参考資料(母子手帳の該当ページ、自治体のチラシなど)をそっと用意しておく
・パパが口火を切って説明し、ママに全部言わせない
・最後に「いつも手伝ってくれてありがとう」ときちんと感謝を伝える
祖父母からしても、
「何も聞かされずに、あとから注意される」より
「最初に“こうしていきたい”と説明される」ほうが受け止めやすいことが多いです。
ママにとってもパパにとっても、祖父母は大切な存在です。
ただ、育児の常識や安全基準は、少しずつ変わってきています。
パパが
「昔と今の違い」を理解し
「危険なライン」と「価値観の違いのライン」を見分けて
「ママと祖父母の間に立つ人」
になってくれるだけで、
家庭の空気はぐっと穏やかになります。
