妻の働き方別“お金と休み”ガイド:正社員・フリーランス・役員で何が変わる?

共働きの家庭で妊娠が分かったとき、多くのパパが最初に不安になるのが「これから1年くらいのお金、大丈夫かな?」というところだと思います。

ところが実際には、

・同じ「産休・育休」でも、正社員なのかフリーランスなのか、役員なのかで受けられる制度が大きく違う
・「うちの会社はこうだから」で考えると、妻の働き方に当てはまっていないことが多い

というパターンがかなりあります。

ここではパパ向けに、

・産後1年くらいまでに、ざっくりどんなお金と休みが動くのか
・妻が正社員の場合、フリーランスの場合、会社役員の場合で何が違うのか
・パパが最低限チェックしておきたいポイント

を整理していきます。

(制度は2025年時点の情報をもとにした一般的な内容です。細かい条件や最新情報は、会社の総務・加入している保険者・お住まいの自治体・社労士などに必ず確認してください)

目次

産後1年のお金と休みの「ざっくり全体像」

まず、妻がいわゆる「会社員(正社員・契約社員など)」として働いている場合の、ごく一般的な流れを簡単に整理します。

会社員ママの場合、多くのケースで関わってくるのは次の制度です。

産前産後休業(いわゆる「産休」)
 出産予定日6週間前から出産後8週間までの期間、会社を休める制度

出産育児一時金
 出産1回につき原則50万円が健康保険から支給される(一部48.8万円の場合あり)

出産手当金
 産前42日(多胎は98日)+産後56日のうち、会社を休んで給与が出ていない日について、標準報酬日額の約3分の2が健康保険から支給される

育児休業(育休)
 原則、子どもが1歳になるまで(条件により1歳2か月〜2歳まで延長可)休める制度

育児休業給付金(育休手当)
 雇用保険から支給される給付金で、育休開始から180日までは休業前賃金の67%、その後は50%が目安

社会保険料の免除
 産休・育休中は健康保険・厚生年金の保険料が免除される(将来の年金額には不利にならない)

ここに、全員が対象になる児童手当(令和6年から拡充)、自治体独自の出産・子育て応援給付金などが加わりますが、これは働き方に関係なくもらえる部分なので、今回は詳しい説明は割愛します。

この「会社員パターン」をベースに、
フリーランスや役員の場合に何が変わるのかを見ていきます。

妻が「正社員・会社員」の場合

いわゆるフルタイム・パートタイムを含む「会社員ママ」の場合、パパ目線で押さえておきたいのは次の3つです。

・どこまで休めるか(休みの枠)
・休んでいる間にどんなお金が入るか(給付・一時金)
・社会保険・税金まわりはどうなるか

正社員ママの「休み」の枠

・産前休業
 出産予定日の6週間前(双子以上は14週間前)から、ママの希望で取得可能

・産後休業
 出産の翌日から8週間は、原則として働かせてはいけない期間

・育児休業
 原則、子どもが1歳になるまで
 保育園に入れないなどの事情があれば、最長2歳まで延長可能

「いつからいつまで休むか」は会社と相談ですが、
出産予定日がだいたい決まった段階で、
会社の就業規則とあわせて逆算しておくと安心です。

正社員ママが受けられる主なお金

代表的なものを整理すると……

  1. 出産育児一時金(健康保険)
     ・1児につき原則50万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関等では48.8万円)
     ・ママが夫の扶養に入っている場合は、夫側の健康保険から出るケースもある
  2. 出産手当金(健康保険)
     ・対象:会社の健康保険に加入しているママ本人
     ・期間:産前42日(多胎は98日)〜産後56日のうち、会社を休んで給与が出ていない日
    ・金額:標準報酬日額の3分の2が1日あたり支給される
  3. 育児休業給付金(雇用保険)
     ・対象:雇用保険に一定期間以上加入しているママ(パートでも条件を満たせば対象)
     ・期間:原則子どもが1歳になるまで(延長あり)
     ・金額:
      休業開始から180日まで…賃金日額×支給日数×67%
      181日目以降…賃金日額×支給日数×50%
  4. 社会保険料の免除
     ・産休・育休中は健康保険・厚生年金保険料が免除
     ・免除期間も将来の年金額の計算上は「保険料納付済み」として扱われる

ざっくりイメージ:月給25万円の正社員ママの場合

かなり大ざっぱですが、
月給25万円でフルタイム勤務だったママが、

・産前産後休業+育休をあわせて約1年休む
・給料は基本的にゼロ(賞与もなし)

というケースをイメージしてみます。

お金の流れは、概ねこんな感じです。

・出産育児一時金:50万円前後
・出産手当金:産前産後あわせて「給料の約2/3×3〜4か月分」くらい
・育児休業給付金:
 育休開始から6か月は「給料の約67%」
 7か月目以降は「給料の約50%」

実際には上限額・勤務状況・賞与の有無などで変わりますが、
ざっくり言えば、

「産後1年のあいだ、手取りベースで普段の給料の半分〜3分の2くらいはカバーされる」

というイメージです。

この「ざっくりイメージ」があると、

・産後1年の生活費がどれくらい足りなさそうか
・あらかじめ貯金がどれくらい必要そうか

を、パパのほうで考えやすくなります。

妻が「フリーランス・個人事業主」の場合

次は、ライター、デザイナー、講師業、フリーランスエンジニアなど、
会社に雇われていない「個人事業主」や「業務委託」などの働き方のケースです。

フリーランスママの場合、会社員と決定的に違うのは、

・法律で決まった「産休・育休」はない
・出産手当金も育児休業給付金も原則なし

という点です。

フリーランスママが使える主な制度

とはいえ、何もないわけではありません。

フリーランスでも、多くの人が使える公的な支援は次の通りです。

  1. 出産育児一時金
     ・国民健康保険など公的医療保険に加入していれば、原則1児につき50万円(条件により48.8万円)を受け取れる
  2. 国民年金保険料の産前産後免除
     ・出産前後の一定期間、国民年金保険料が全額免除になる制度
     ・将来の年金額は、免除されていても満額に近い扱いになる
  3. 自治体独自の出産・子育て給付
     ・自治体によっては、出産応援給付、子育て応援金などがある

一方で、

・出産手当金(健康保険)
・育児休業給付金(雇用保険)

は、「会社員として働いていること」が前提の制度なので、
フリーランスだけをしているママは対象外になります。

産後1年のお金のイメージ(フリーランス)

フリーランスの場合、

・休んでいる間の「収入補償」は基本的にゼロ
・仕事をセーブすれば、その分だけ売上もダウン

という世界になります。

一方で、

・出産育児一時金:50万円前後
・国民年金・国保の免除・減免で、数万〜十数万円程度の負担減になる場合もある

会社員ママと比べると、

・出産手当金
・育児休業給付金

がない分、1年間で200万〜250万円以上、受け取れるお金が少なくなるというシミュレーションも出ています。

ここはパパがしっかり理解しておかないと、

「なんでそんなに不安がっているのか」
「なんでそんなに早く仕事再開しようとするのか」

が分からず、すれ違いになりがちなポイントです。

パパができるサポートの例

フリーランスママの場合、パパが意識しておきたいのは次のようなことです。

・出産前に「産後1年の売上シミュレーション」を一緒にしておく
・どのくらい休むつもりなのか、どの時期からどの程度仕事を再開したいのかを話し合う
・収入が減る分を、パパの収入・貯金・家計の見直しでどうカバーするかを考える
・仕事再開後、家事育児の分担をどう変えるか(ママだけが二毛作にならないように)

「会社員と同じように育休手当があるだろう」という思い込みを手放して、
フリーランスの現実をパパが理解しておくことが大事なポイント
になります。

妻が「会社役員(取締役など)」の場合

最後は、妻が自社の役員だったり、会社の取締役・執行役員など「役員」という立場で働いているケースです。

役員ママの場合は少しややこしく、

・専任役員(役員としてだけ報酬をもらっている)
・兼務役員(役員でありつつ、従業員としても働いている)

で扱いが変わります。

役員ママの「産前産後」と出産手当金

ポイントをシンプルに整理すると、次のようなイメージです。

・会社の健康保険(協会けんぽや組合健保)に加入している役員なら、
 会社員と同じように出産育児一時金(50万円前後)は受け取れる

出産手当金も、一定の条件を満たせば役員でも受給できる
 (健康保険に加入していて、産前産後期間中に労務に従事せず、役員報酬が出ていない、または出産手当金より少ない場合など)

産前産後休業中の社会保険料免除についても、健康保険に加入している役員なら適用されるケースが多い

一方で、「育児休業」に関しては注意が必要です。

役員ママと育休・育児休業給付金

専任役員(労働者性がない役員)の場合
 – 育児・介護休業法の対象外になるため、法律上の「育児休業」は想定されていない
– 雇用保険にも原則加入できないため、育児休業給付金は受給できない

兼務役員(役員でありつつ、従業員としての地位もあり雇用保険に加入している)の場合
 – 従業員としての部分については、一般の会社員と同様に育児休業給付金の対象となるケースがある

つまり、

・「妻が自分の会社の代表取締役で、役員報酬しかもらっていない」
 育児休業給付金は原則なし

・「妻が大企業の課長職兼○○部門の役員で、雇用保険にも入っている」
 → 従業員として育休・育児休業給付金の対象になるケースあり

というイメージです。

また、役員報酬をどうするかによって出産手当金の受給可否も変わるため、
このあたりは社労士や顧問税理士とセットで確認したほうが安全です。

パパ目線での押さえ方

役員ママの場合、パパとしてはまず、

・妻が「専任役員」なのか「兼務役員」なのか
・健康保険はどこに入っているのか(協会けんぽ・組合健保・国保など)
・雇用保険に入っているかどうか

を確認するところから始めると、話が整理しやすくなります。

パパが押さえておきたいチェックリスト

最後に、妻の働き方に関係なく、パパが最低限チェックしておきたいポイントをまとめます。

  1. 妻はどのパターンか
     ・会社員(正社員・契約社員・パートだが雇用保険あり)
     ・フリーランス・個人事業主
     ・会社役員(専任役員か兼務役員か)
  2. 妻が加入している保険
     ・健康保険:会社の健康保険か、国民健康保険か、夫の扶養か
    ・雇用保険:加入しているか(給与明細や離職票などで確認)
  3. 産前産後〜育休のスケジュール案
     ・いつから休み始めるか(産前休業の開始日)
     ・どこまで休みたいか(育休の終了イメージ)
     ・会社といつまでに何を相談する必要があるか
  4. もらえる(見込みの)給付
     ・出産育児一時金
     ・出産手当金(対象かどうか)
    ・育児休業給付金(対象かどうか)
    ・自治体の出産・子育て給付
  5. 産後一年のお金のざっくり試算
     ・今の手取り月収
     ・産後1年のあいだに入ってくる見込みの金額
     ・足りない分をどう埋めるか(貯金・ボーナス・生活費の見直しなど)
  6. 手続きの担当
     ・会社に出す書類は誰がいつ出すか
     ・自治体への届出(出生届、児童手当など)の担当
     ・パパ側の「産後パパ育休」「育児休業給付金」の手続きも含めて整理

パパが制度をざっくり把握しておくだけで、

「そんなに不安がるほどなの?」とモヤモヤされる
「なんで私だけ調べなきゃいけないの」とママが疲れる

といったすれ違いをかなり防げます。

「完璧に理解する」必要はありません。

「うちは妻の働き方だと、この制度は使えて、この制度は使えない」
「だから産後1年は、これくらいのお金の動きになりそう」

このくらいのイメージをパパが持っておくだけで、
夫婦での話し合いがぐっと現実的になっていきます。

そのうえで、細かいところは会社の総務・市区町村の窓口・社労士・FPなどに相談していけば大丈夫です。


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